FC2ブログ

詰将棋考察ノート

詰将棋に関する考察あれこれ。

詰パラ2021年2月号 大学院結果稿補足

院9、院10の補足です。詰パラ2021年2月号の結果稿ページを開きつつお読みください。


◇院9 添川公司「篤姫」 補足
小駒煙の最長手数の記録更新、は置いておくとして、小駒煙で初形の玉位置が9段目、というのは史上初。
では、どうして初形の玉位置が9段目の小駒煙は作られていなかったのだろうか。
理由はいくつか考えられる。

(1)序盤の変化で玉が9段目に戻る変化に備えて、金を手持ちにしている必要がある
  序盤の14手目辺りまでを確認してもらうとわかるが、序盤の早い段階で金2枚が攻方の持駒になり、1枚が玉方の駒台に乗っている。つまり、盤上には金が1枚のみ。
  これを逆算で創作しようとすると、収束や中盤の横追いでは金をできるだけ盤上に置かないようにし、創作終盤(解き手から見ると序盤)まで金を温存しておかねばならない。このため創作難易度が非常に高くなる。

(2)香のレールに乗せるまでの手順に工夫が必要。
  小駒煙で玉を6段目あたりから1~2段目まで追い落とす場合、たいていは「香の後押し+銀」や「香の後押し+金(または全圭杏と)」の形を使用している。
  玉が最初に6~7段目に居る場合は、香のレールに乗せるのは難しくない(最初からレールに乗っている場合すらある)。
  しかし玉位置が9段目の場合、香の後押しを受けられる玉位置まで持ってくるのが(創作上)難しくなる。
  これを踏まえて、序盤27手目までを再確認してみてほしい。

(3) わざわざ玉を9段目まで持って来なくても、35枚を盤上に置き切ることは可能。
  初形の玉位置を9段目にしないのであれば、前述(1)(2)のような課題は発生しない。

こういった理由から、「漠然と逆算をした結果、玉の初形位置が9段目になりました」などということはまず起こり得ない。
そう考えると、相当凄いことをやっていることがわかる。


◇院10 岡村孝雄「アツクナレ」 補足
解説でも触れているが、「都玉+攻方の小駒3枚」または「都玉+攻方の小駒2枚+攻方王」の詰上りを考えた場合、大抵は3手にすら逆算できない。
「55玉/33王、56金、65銀」がほぼ唯一逆算が可能な形だと思われる。
過去、素材として下の局面あたりまで逆算を試みた作家もいらっしゃるようで、しかしここからが難しい。
20210222_1.png

最大の課題が「玉をどうやって左辺に移動させるか」という点。逆算で21~31~41を通過させるには33王が強すぎてほぼ行き詰まってしまう。
“それなら、34王の形にすればいい” と作者は考えた……かどうかは定かではないが、王を2回移動させる着手を入れることにより、左辺への道が見えてくる。
とは言えこの後も40枚置き切るまでは大変。しかも敢えて困難な道を選ぶかのような逆算により、序~中盤の変化紛れが恐ろしいことになっている。
ちなみに家の環境では柿木将棋でも脊尾詰でも初形からでは解けず。これを作る方も凄いが、これを解いた15名も凄すぎる。



  1. 2021/02/22(月) 20:00:00|
  2. 大学院補足
  3. | コメント:0

詰パラ2019年7月号 院8 解説補足

書きかけのまま放置していた記事を更新。


詰パラ2019年7月号に結果稿が載っている、院8の補足。
作品自体の解説をほとんどせずに作者コメントを引用して済ませているため、何をやっているのかが伝わりにくくなっている。
ひとまず、機構としてはこの記事が詳しい。

ここでは解説で取り上げた作品について書いておくことにする。
■参考作品 河原泰之「TANGO」 近代将棋1992.4
20190730_01.png

作意手順の詳しい解説は「詰将棋の欠片」で。
と金2枚の移動合による3段馬鋸である。こちらはと金ベルトを用いて玉位置を変えている。
28香の消去を挟むことにより2往復させているのが巧妙だ。
さて、作意手順は211手詰なのだが、実は「TANGO」には早詰がある。
まずは手順を途中まで進めよう。
 81と、72玉、71と右……41と右、32玉、
 23金、同玉、13角成、32玉、
 31と、42玉、41と左、……71と左、82玉、
 46馬、55と左、81と、72玉、71と右、62玉、
 35馬、44と、61と左、72玉、
 36馬、54と引、71と左、82玉、
 37馬、55と左、81と、72玉、71と右、62玉、
 26馬、44と、61と左、72玉、
 27馬、54と引、71と左、82玉、
 37馬
で次図。
【途中図1】
20190730_02_53teme.png

ここで作意は55と左とする。
 55と左、81と、72玉、71と右、62玉、
 26馬、44と、
【参考図】
20190730_03_sankou1.png
実は、ここで44同馬!以下詰んでしまうのだ。手順はやや長いが、一例は
 44同馬、同歩、61と右、52玉、51と右、42玉、33飛成、同玉、
 21歩成、42玉、32と、53玉、64銀、54玉、44角成、同玉、
 55銀上、43玉、54銀、32玉、22桂成、33玉、23成桂、34玉、
 24成桂、35玉、36歩、44玉、53銀左不成まで。

では「TANGO」は不完全作か、というとそうではなく、途中図1で55と直と応じれば先ほどの詰み筋には入らない。
【途中図1】より
 55と直、81と、72玉、
 36馬、54と引、71と左、82玉、
 46馬、55と直、
【途中図2】
20190730_04_tochuuzu2.png
玉方は44とを動かさずに応じるのが最善。以降は、
 81と、72玉、71と右……41と右、32玉、
 23香成、同玉、13金、32玉、
【途中図3】
20190730_05_tochuuzu3.png
23香成~13金とする。これは28香を消して18歩を取りに行くため。
そして28香が消えたため、先ほどの余詰筋は成立しなくなっている。すなわち、ここからは再度3段馬鋸になる。
 31と、42玉、41と左……61と左、72玉、
 36馬、54と引、71と左、82玉、
 37馬、55と左、81と、72玉、71と右、62玉、
 26馬、44と、61と左、72玉、
 27馬、54と引、71と左、82玉、
 28馬、55と左、81と、72玉、71と右、62玉、
 17馬、44と、61と左、72玉、
 18馬、54と引、71と左、82玉、
 28馬、55と左、81と、72玉、71と右、62玉、
 17馬、44と、61と左、72玉、
 27馬、54と引、71と左、82玉、
 37馬、55と左、81と、72玉、71と右、62玉、
 26馬、44と、61と左、72玉、
 36馬、54と引、71と左、82玉、
 46馬、55と左、81と、72玉、71と右、62玉、
 35馬、44と、
【途中図4】
20190730_06_tochuuzu4.png
以降は収束。手順のみ示す。
 61と右、52玉、51と右、42玉、41と右、32玉、23金、同玉、
 24馬、32玉、33馬、同玉、21歩成、23玉、22角成、34玉、
 44馬、同歩、35歩、25玉、23飛成、15玉、16歩、同玉、
 27銀、17玉、26龍、28玉、38銀右、39玉、29龍、48玉、
 49龍、57玉、58歩、同桂成、同龍、66玉、67龍、75玉、
 76龍、84玉、85歩、95玉、87桂、同と、96歩、94玉、
 74龍、93玉、84龍、92玉、82龍まで205手詰

というわけでこれが本手順となり、211手詰は作意誤設定ということになる。
それにしても、当時205手詰で解答した人はどれくらい居たのか、そしてその解答がどう扱われたのか、は気になるところだ。

最後にお知らせ。馬屋原氏は早ければ今期中にまた斬新な趣向作で登場いただく予定。乞うご期待!



  1. 2019/07/30(火) 00:01:00|
  2. 大学院補足
  3. | コメント:0

詰パラ2019年7月号 院7 解説補足

『盤上のフロンティア』入手。


詰パラ7月号に結果稿が載っている、院7の補足として、解説で取り上げた参考作品について。
図面すら載せていないのはさすがに不親切なので、ここで解説…しようと思ったが、有名作品だけあっていろいろな場所で紹介されている。

■参考作品1 駒場和男「望郷」 風ぐるま1955.9
手順は「借り猫かも」で見ることができる。⇒渡辺三郎好作集: 借り猫かも

飛遠打→馬鋸により飛の利き筋を遮断する。上記事でも紹介されているように、このパターンは割と古くから作例がある。
一方「ストライクショット」は、飛遠打→馬鋸→飛の移動により馬の利き筋を遮断する、という構成になっており、この点が新しい。
余談ながら、一番最初の投稿図では18飛が最初から盤上に置いてあった。18飛を打つ手はよくぞ入れたもの。

■参考作品2 駒場和男「地雷原」近代将棋1979.1
馬鋸で馬が下段隅(19または99)まで行く、という作例。

詳しい解説は「詰将棋の欠片」で。

また、馬鋸の意味づけに関しては「借り猫かも」でも紹介されている。
なぜ遠ざかるのか: 借り猫かも
馬鋸の意味づけで分類しようとした記事で、他作品も含めて眺めてみると、何かアイデアが浮かぶかも。



  1. 2019/07/01(月) 00:01:00|
  2. 大学院補足
  3. | コメント:0

お知らせ

51手以上の作品募集中。

プロフィール

ほっと

Author:ほっと
詰将棋作家/詰パラ大学院担当/看寿賞選考委員。

カレンダー

04 | 2021/05 | 06
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

FC2カウンター

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
考察 (14)
第ч回裏短コン (25)
第ϻ回裏短コン (27)
詰パラ感想 (52)
詰将棋解答選手権 (17)
発表作 (6)
詰将棋全国大会 (8)
会合参加記 (2)
勝手に解説 (1)
チェックリスト (0)
その他 (7)
大学院補足 (3)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する