詰将棋考察ノート

詰将棋に関する考察あれこれ。

第33回詰将棋全国大会 解答競争出題作について(2)

裏短コン作品募集中です!
詳細は作品募集記事をご覧ください。


前記事に続き、もう1作を見てみよう。
第33回詰将棋全国大会 解答競争第20問
こちらも出題形式は「初手を答えよ」というもの。
20170724_02.png
手順を見る前に、参考作品から。
多くの方はこの作を思い浮かべるであろう。

■詰パラ1972.5 上田吉一氏作 1972年度看寿賞中編賞
20171028_02_1.png
17角、73玉、37角、(途中図1)
20171028_03_1.png
遠角2発! 意味付けは、2手進むと明らかになる。
84玉、39角、(途中図2)
20171028_03_2.png
玉方は角の効きを重複させるために48に中合をしたいのだが、8段目のため桂合ができない!
後の手順は省略する。詳細は看寿賞作品集などで。

さて、これを踏まえて、改めて冒頭の作を見てみよう。ちなみに、玉方の持駒には歩しか無い。
20171028_04.png
初手55角?とすると、84玉(このとき玉方の持駒には桂が入る)、39馬のときに66桂!と合駒されて詰まない(失敗図1)。
20171028_05_1.png

しかし、初手37角と打てば、合駒は効かないため84玉、39馬で、このとき48桂とは打てない。歩も合駒できないため逃げるしかなく、59角と引けば詰みだ。
つまり、作意は37角、84玉、39馬、95玉、59角まで、となる。
あーはいはい。桂合回避のための角の遠打を5手で表現したのね。





と、ここで読みを打ち切った貴方は、作者の仕掛けた罠に嵌っているのだ。
37角に合駒は効かない、と書いたが、46桂!と移動捨合する手がある。
同角、84玉、39馬に57桂!(失敗図2)
20171028_06_1.png
46桂と近づけることにより、焦点が57になる。そして57には桂が打てる。
結局、角をこのラインから打ってしまうと詰まない。

作意手順はこちら。
51角、82玉、71馬、同金、92香成まで5手。
84に逃がさないようにする51角が正解。
案外、最初からこちらを読んだ人もいらっしゃるかもしれない。

ただし、偽作意において46桂と跳ねる手はしっかり読めば見える手であること、43歩が不要駒(その他にもちょっと配置を直せば不要になる駒が多数)であることを考慮すると、あまり良い出来ではなさそう。
M六段、T氏も誤解。正解したF四段はさすがとしか言いようがない。

最後にまとめ。
タイムトライアルでマニアを嵌めるためには、
1) 有名な作品の原理を元に、3手か5手の手順を構成する。
2) ただし、それは偽作意にして真の作意は別の手順を用意する。
というパターンが有効だ。運営側は参考にしていただきたい。
そして、参加者はこのような作に引っ掛からないように気をつけよう。



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  1. 2017/10/28(土) 23:00:00|
  2. 発表作
  3. | コメント:4

第33回詰将棋全国大会 解答競争出題作について(1)

裏短コン作品募集中です!
詳細は作品募集記事をご覧ください。


さて、「気が向いたら書く」と言ったまま放ってあった、全国大会での解答競争出題作の解説を今頃になって書く。
裏短コンのネタにでもなれば。

まずはこの作。
第33回詰将棋全国大会 解答競争第10問
ちなみに出題形式は「初手を答えよ」というもの。
20171022_01.png

解説の前に、予備知識として、いくつか作品を紹介する。
まずは有名な作としてこちら。

■詰パラ1989.10 金子清志氏作「姫様ズームイン」
20171022_02.png
53飛、42玉、(A)73飛不成、64桂、53飛成まで5手。

まず、玉方の持駒は歩のみであることを頭に入れておこう。
(A)で83飛成?とすると、64歩!と打たれる。これに対しては74玉と逃げることができるため逃れ。
同様に、(A)で63飛成や73飛成もやはり64歩と打たれて、同龍と取ることができるため逃れ。
しかし、73飛不成!とすると、64歩?は打歩詰のため指すことができない、というからくり。64桂と跳ねて受けるのが最善だが、53飛成までで詰み。

なお、本作には(A)で57角上以下の余詰がある。34香→35香くらいで余詰は消せるようだが、これは作者が納得する修正図ではないだろう。
ともあれ、本作は打歩詰に関係する不成が3手で実現可能ということを示した画期的な作品。(※1)
ただし、この筋は構図のバリエーションが非常に少ない。というか、実質1種類しか存在しない。
類例を挙げよう。

■2009.7.19 第25回詰将棋全国大会 解答競争3手詰⑩ 松阪大輔氏作
20171022_03.png
83飛不成、74桂、63飛成まで3手。

83飛不成としたときに限り、74歩が打歩詰で打てなくなる。原理は金子氏作と同様。解答競争用とは言え、新作とは呼べないだろう。
このように、打歩詰に関係する不成を3手詰で実施しようとすると、構図としてはどうしても金子氏作とよく似た形になり、双玉だったり角2枚の配置だったりと特徴的な配置が現れてしまう。

さて、これを踏まえて、改めて最初の作を見てみよう。
20171022_01.png
タイムトライアル形式であり、制限時間内に1問でも多く解かねばならない。
初形を眺めて、歩以外の全駒が配置された(ように見える)初形に、75玉、63飛、58角、59香、85角といった特徴的な配置。
「あーはいはい。83飛不成の筋ね」と思い込んでしまった人が多数だったのだろう。そしてそう思い込んだ瞬間、この解答を白紙に戻して正解に辿り着くことはほぼ不可能になってしまう。
一見、歩以外の全駒が配置されているように見えるが、後手の持駒を表示させてみよう。
20171022_04.png
実は、後手の持駒に香がある! つまり、初手83飛不成では74香と打たれてしまい駄目である。
では作意は?
49角、54香、16角まで3手。
初手が16角の転回を作りつつ、合駒の香を吐き出させる一石二鳥の手。ちなみに2手目は58~54までどこに香合してもよい非限定。
というわけで、初手は「49角」が正解となる。
F四段やM六段、T氏も引っ掛かっていた。正解者は何名だったのだろうか。

※変化紛れについては、みんけんひでさんが詳細に解説されています。遅ればせながら、ありがとうございます。
「藤井四段が間違えた三手詰」を解説する

(※1) 3手詰で打歩に関係した不成を実現した第1号局は、下記のようだ。
■詰パラ1970.11 加藤徹氏作
20171022_05.png
52歩不成、(イ)53角、39香まで3手。
金子氏作の19年前に既に作られていたとは知らなかった。
なお、(イ)で63角は同飛成、53歩、同龍、同角、24角まで7手2駒余り。
3手詰で4手変長というのも時代を感じさせる。
ちなみに変長を消した修正図もある。

((2)に続く)

  1. 2017/10/22(日) 00:01:00|
  2. 発表作
  3. | コメント:0

かえるのうたが 改良図

『ある作品について、その作者が語れば語るほど、作品の価値は落ちる』と言ったのは誰だったか。
しかし、今回ばかりは書かないわけにはいかない。


かえるのうたが で、改めて配置について調べていたところ、明らかに発表図よりも良い図が得られてしまった。
(原図は前記事を参照)

「かえるのうたが b)44桂→56金 c)53銀→56金 d)77龍→56金」 改良図

20160919_1_a).png

56香、同桂、44銀、同銀、73角、同龍、67桂迄7手。
20160919_2_b).png
44銀、同銀、73角、同龍、67桂、同金、56香迄7手。
20160919_3_c).png
73角、同龍、67桂、同金、56香、同桂、44銀迄7手。
20160919_4_d).png
67桂、同金、56香、同桂、44銀、同銀、73角迄7手。


作意および命名が不変なのがせめてもの救いか。

なお、改良図の4つの図のいずれも不要駒は一切無い。
配置については、原図では配置に重複感があったが、改良図ではほぼ解消されている。そして原図で今一つ働きが悪かった93角も、改良図では1枚で複数の筋の余詰防止に役立っており、それほど気にならないだろう。
紛れについても、原図では紛れがほとんど無かったのに対し、改良図では53龍と取ったり香を離して打つ紛れ、b)で56銀と取ったりする紛れが結構手が続くため、多少は考えどころが増えていると思う。

最初からこちらで発表できていれば……と思うと残念でならない。
それにしても、ちえのわ雑文集で偉そうに語っているのが間抜けである。

ともかく、中途半端な状態で発表してしまったことをお詫びします。申し訳ありませんでした。

■おまけ
別展開作品。 d) を2回繰り返すというものだが、どうにも今一なのでここで出すことに。
20160919_5.png
15手。御笑覧ください。
  1. 2016/09/19(月) 22:00:00|
  2. 発表作
  3. | コメント:2

かえるのうたが 命名について

詰将棋パラダイス2016年5月号 小25

「かえるのうたが b)44桂→56金 c)53銀→56金 d)77龍→56金」

20160821_1_a).png

56香、同桂、44銀、同銀、73角、同龍、67桂迄7手。
20160821_2_b).png
44銀、同銀、73角、同龍、67桂、同金、56香迄7手。
20160821_3_c).png
73角、同龍、67桂、同金、56香、同桂、44銀迄7手。
20160821_4_d).png
67桂、同金、56香、同桂、44銀、同銀、73角迄7手。

史上初の7手詰の四つ子作品。狙いは4つの図と手順を並べてみれば一目瞭然だが、一応書いておくと、
A=56香、A'=56同桂
B=44銀、B'=44同銀
C=73角、C'=73同龍
D=67桂、D'=67同金
としたとき、
a) AA' BB' CC' D まで。(ABCの順に捨ててDで詰める)
b) BB' CC' DD' A まで。(BCDの順に捨ててAで詰める)
c) CC' DD' AA' B まで。(CDAの順に捨ててBで詰める)
d) DD' AA' BB' C まで。(DABの順に捨ててCで詰める)
となっており、4つの図を合わせて輪唱を表現している。

評点が低いのは、a) のみでABC評価をした解答者が多かったため。
中には、a)~d)をすべて解いているのに評価はa)のみで付けた、という方も。
選題の言葉で「a)の解答で採点」とあったのは、解答審査(正解・誤解・無解の判定)のことだったのだが、
「ABC評価をa)のみで実施せよ」という意味に解釈されてしまったとすれば残念である。
ちなみに、a)~d)すべてまとめて1つの作品であり、28手すべての手順が作意である(これは本作に限らず、すべてのツイン作品に共通した考え方)。

手順は特に解説することは無いので、命名について書く。
本作の命名は、前半部分「かえるのうたが」と、後半部分「b)44桂→56金 c)53銀→56金 d)77龍→56金」から成る。

■命名について(後半部分)
後半部分は、チェスプロブレムにおける“stipulation”(出題図の条件)にあたるものである。
(従来の命名)+(stipulation)を合わせて1つの命名としたのは、本作が史上初である。
これは、後々引用しやすいようにしたためであるが、ツインについての理解が得られていない現状ではあまり意味が無いか。

ちなみに、stipulationのみを命名にした前例が存在するので紹介させていただく。
◇山田康平氏作 詰パラ1997.12 短コン 「b)44桂→33」

ツインとしての完成度はかなり高い。しかしこれを短コンに出すとは今考えても前衛的過ぎる。なお、出題時に「本作はツインであり、b)も解いたうえで、a)b)を合わせて1作として評価せよ」などという注釈は一切書かれていなかった。

■命名について(前半部分)
前半部分「かえるのうたが」についても説明する。
これは言うまでもなく、童謡『かえるの合唱』の歌詞の一部であるが、「五線譜に書かれた歌詞の一部」という位置づけ。したがって、すべて平仮名にしている。
そして、ここに込められた意味は以下のとおり。
【1】 4グループによる輪唱を表している。
【2】 あえて「・・・・が」という、本来であれば後ろに言葉を続けるべき箇所で切ることにより、解き手が無意識のうちに続きを補完してしまうという効果を狙っている。さらに、「図面についても出題図だけではなく、b)c)d)を補完する必要がある」ということを暗に意味している。

ここで、【1】について、もう少し詳しく説明しよう。
『かえるの合唱』の五線譜を、2小節ずつ区切ったものを、前から順にA、B、C、Dとする。下記参照。
A=56香20160821_A1.png
B=44銀20160821_B1.png
C=73角20160821_C1.png
D=67桂20160821_D1.png

そして、4つのグループ a)~d)が、次のようにして輪唱することを想定する。
(1)各グループは、A~Dまでを2回繰り返して歌うものとする。
(2)最初にグループd) が歌い始める。
(3)2小節遅れてグループc) が歌い始める。
(4)さらに2小節遅れてグループb) が歌い始める。
(5)さらに2小節遅れてグループa) が歌い始める。

これを時系列で表すと、下表のようになる。
グループ 1 2 3 4 5 6 7 8 91011
a)ABCDABCD
b)ABCDABCD
c)ABCDABCD
d)ABCDABCD

この表において、色を付けた部分を表現しているのである。

解答時にここまで汲み取れた方はまずいないだろうが、「輪唱」というところがそれなりに伝わっているようなので良しとしよう。
  1. 2016/08/22(月) 00:30:00|
  2. 発表作
  3. | コメント:0

「かえるのうたが (以下略)」について

GW中は果し合い三昧の予定。
いや、某原稿も書かないといけないのだが。

小25がほとんど話題になっていなくて寂しいので、少しだけ補足させていただく。

■作品について
命名を伏せて出題図を解いた場合、作者の意図はまったく分からないと思われる。
まずは、以下のことを頭に入れておいていただきたい。
 ・本作には命名が付いており、それは選題の言葉に書かれているとおり。ちなみに選題の言葉で「小20」は「小25」の誤り。
 ・本作は「クアドラプレット(四つ子)」作品であり、出題図はそのうちの a) の図を示す。
 ・b) c) d) は、それぞれ命名に書かれているとおりに a) を変更して得られる図である。

一応 b) c) d) の図を載せておく。a) については詰パラ5月号参照。
20160501_1_b).png
20160501_2_c).png
20160501_3_d).png

玉方の持駒は、a) b) c) d) とも「残り全部」である。実際にはその中身は図面ごとに異なるが、解図に影響はない。
ここまで把握できたら、b) c) d) を解かなくてもどんな内容かはだいたい想像がつくだろう。

■解答審査について
解答の正解・誤無解の判定は、a) の解答のみで実施される。
これは、七條賞の対象作品数が1月号の時点で決められており、途中から対象作品を増やしたりするわけにはいかないため。選題の言葉を読まない解答者もいるだろうし。
したがって、解答の際に b) c) d) の手順を書く必要はない。しかし、28手分の手順を書けば、それがそのまま作者の意図を理解したことの証明になるので、余白があれば是非書いてみてほしい。
なお、b) c) d) の手順が合っていても、a) を間違えていると誤解扱いになってしまうのでくれぐれもご注意を。

■命名について
命名は本来、作品のすぐ隣に書かれているべきである。しかし詰パラでは、レイアウト上1行に収まる文字数でないと駄目のようだ。
長過ぎる命名を付けた理由は、従来の最長命名文字数の記録更新を狙ったもの……ではなく、ちゃんとした理由がある。
理由については、またいずれ書きたいと思う。

それにしても、本作は裏短コンに出したかった。裏短コンのコンセプトにぴったりだったのだが、盤面枚数の条件を満たしていないために泣く泣く欠場……。
  1. 2016/05/01(日) 20:00:00|
  2. 発表作
  3. | コメント:3

お知らせ

裏短コン解答募集中!
解答締切:12/3(日)深夜
詳細は出題記事をご覧ください。

プロフィール

ほっと

Author:ほっと
詰将棋作家を名乗るには発表作が少なすぎ。
評論家を名乗るには実績が無さすぎ。

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