詰将棋考察ノート

詰将棋に関する考察あれこれ。

打診手に関する考察(2)

前の記事から二週間空いてしまいました。
週一で更新とか書いてたのはどうした? ……考えていたネタがうまくまとまりませんでした。詰将棋でもそうですが、納得できる状態にならないと投稿できない性格なもので。


本記事は、2016/1/3の記事「打診手に関する考察」の続きである。狭義の打診手について、いくつか見つけた作を紹介させていただく。
ちなみに前回の記事を未読の方は、まずそちらを読んでおいていただきたい。

要点だけ書くと、下記のような構造を持った作品、ということになる。
逃れのパターン
打診を経由しない場合に2通り(これをXとYとする)の攻め方があり、玉方のある駒pに対して、
X →p成  …逃れ。
Y →p不成 …逃れ。
詰みのパターン
打診Zを行った場合、
Z ―→ p成  → Y …詰み。
 └→ p不成 → X …詰み。
で詰み。

①富沢岳史 氏作 (詰パラ1989.6)
20160131_01.png
13桂成、15玉、

20160131_01_t1.png
ここで、14成桂?とすると、同玉、25金、13玉、22銀引不成、12玉、となり下図。
20160131_01_f1.png
さて、ここから攻め方は2通り。
X=21銀不成、11玉、12歩、21玉、31歩成、12玉、13歩、同玉、23歩成→同角成!…逃れ。
Y=23歩成→同角不成!…逃れ。
それぞれの攻め方に対して、角の成と不成を選択されて逃れる。
ならば、こちらが攻め方を選択するより前に、成か不成か、態度をどちらかに確定させよう。
戻って、作意は途中図1から45飛!(途中図2)とする。
20160131_01_t2.png
これに対して、同角成ならば、Yの方の手順で攻める。14成桂、同玉、25金、13玉、22銀引不成、12玉、23歩成、同馬、13歩、同馬、同銀成、同玉、31角以下。

作意は同角不成の方で、Xの方の手順で攻める。
(途中図2から)同角不成、14成桂、同玉、25金、13玉、22銀引不成、12玉、21銀不成、11玉、12歩、21玉、31歩成、12玉、13歩、同玉、23歩成、同角、24銀成、22玉、23成銀、同玉、32銀不成、13玉、35角、22玉、23歩、12玉、21銀不成、(イ)11玉、22歩成、同玉、32と、11玉、44角、同香、23桂まで39手。

ちなみに、(イ)23玉でも同手数駒余らず。しかし、この後、
  (a)24金、22玉、32と、11玉、44角以下
  (b)24金、22玉、32銀成、12玉、13金以下
の2通りの詰め方があるため、(イ)11玉と逃げる方を本手順にしておく。

本作の主張は、何と言っても3手目の打診手を大駒捨てで実施している点。また、手の流れ上、3手目は14成桂と行きたくなるため、即座に打診手を見破るのは難しいだろう。
弱点は、後半のまとめが長いのと、45飛以外に派手な手が出て来ないところ。あえて地味な手順にすることにより、主眼手を明確にする演出とも言えるが、あまり現代的ではないか。

では、現代的に作るとどうなるか。

②久保紀貴 氏作 (詰パラ2014.9)
20160131_02.png
23銀、同玉、(途中図1)
20160131_02_t1.png
ここで、
X=14角、13玉、32角不成→15角成!…逃れ。
Y=14角、13玉、32角成→15角不成!…逃れ。
それぞれの攻め方に対して、角の成と不成を選択されて逃れる。余談ながら、ここで「攻方が不成だと玉方は成、攻方が成だと玉方は不成」となっているのが本作の狙いでもある。
ならば、こちらが攻め方を選択するより前に、成か不成か、態度をどちらかに確定させよう。
26飛!(途中図2)
20160131_02_t2.png
同角成ならば、Yの方の手順で攻める。14角、13玉、32角成、15馬、14歩、同馬、22馬まで。

作意は同角不成の方で、Xの方の手順で攻める。
(途中図2から)同角不成、14角、13玉、32角不成、15角、14歩、22玉、23歩、33玉、43角成、同銀、22飛成まで15手。

打診手を飛捨てで実施しているのは前作と同様だが、成と不成の攻防が面白く、不成を選択した角を捨てて短くまとめた収束も好印象。
作者のブログでも解説されていた

③坂田慎吾 氏作 (詰パラ2015.8)
20160131_03.png
初手から、
X=42馬→同飛成!、43角成、同龍、34歩、同龍…逃れ。
Y=43角成→同飛不成!、42馬、同飛、34歩、32玉…逃れ。
それぞれの攻め方に対して、飛の成と不成を選択されて逃れる。
ならば、こちらが攻め方を選択するより前に、成か不成か、態度をどちらかに確定させよう。
45桂!(途中図)
20160131_03_t1.png
同飛成ならば、Yの方の手順で攻める。43角成、同龍、34歩、同龍、42馬まで。

作意は同飛不成の方で、Xの方の手順で攻める。
(途中図から)同飛不成、42馬、同飛、43角成、同飛、34歩、32玉、31と左まで9手。
打診手の直後に大駒を2枚捨てて、最短のまとめ。評価はそれほど高くなかったが、実にうまく出来ている。絶対に埋もれさせてはいけない作。



玉方の打診中合は多くの作例があるのに対し、攻方の「狭義の打診手」はあまりにも作例が少ない(私の調査が不十分なだけかもしれないが)。逆に言うと、未開拓の魅力的な新手筋がたくさん残されている分野であり、次回創棋会の課題作としても狙い目である(笑)。
……と書いて終わりにしようと思ったら、詰パラ2月号を見て絶句。
谷口 均 氏作(詰パラ2016.2 読者サロン)
20160131_04.png
サロンはサロンでも読者サロン、というのは置いておくとして、テーマが「玉方駒に対する打診」と書いてある。
本作、強制成らせではあるが、打診と呼ぶのは適切ではない。理由は、「37飛が不成で逃れる紛れは存在するが、37飛が成って逃れる紛れが存在しないため」。
一流作家がこういう使い方をしてしまうと、初心者は「あ、こういうのも打診と呼ぶんだ」と思ってしまう。担当者もそのように解説してしまう可能性が高い。気をつけたいところだ。
それはともかく、初手の限定打が面白い。意味付け自体は良く見かけるが、36歩合の変化のときだけ57角と打つと歩以外の駒が入手できるのがあまり見たことの無い筋だった。
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  1. 2016/01/31(日) 00:01:00|
  2. 考察
  3. | コメント:5

【勝手に解説】#01 詰パラ2015.10 中村宜幹氏作「ポルカ」

ブログのデザインを変更してみました。以前のデザインも気に入っていたのですが、ブラウザによってはレイアウトが崩れる模様。
今回のも完全には回避できていないようですが、多少はマシかと。


■はじめに
今回取り上げるのは、詰パラ2015.10 中村宜幹氏作「ポルカ」。詰パラ2016.01の結果稿に記載の手順に誤記があり、正しい手順を忘備録の意味も込めて書いておこう、と思ったのが始まり。
手順を理解しようと調べたところ、見た目よりも複雑な変化紛れを内包している。また、結果稿では、馬鋸のタイミングについても省略されているため、これについても補完しておきたい。

■作品解説
20160117_01.png
56と、同玉、15と、(途中図1)
20160117_t01.png
ここから26成銀!とするのが、いわゆる「ヤケクソ中合」と呼ばれるトリッキーな応手。どうせ直後に取られてしまうため、先に移動捨合することで2手稼ごうとするものだ。やや唐突な印象を受けるが、趣向手順中の玉の逃げ方で破調が存在しているのを事前に警告してくれている、と見なすこともできるか。

(途中図1から) 26成銀、同龍、47玉、27龍、(途中図2)
20160117_t02.png
解説では簡単に書かれているが、ここから1手ごとに分岐があって難しい。
46玉は、57銀に対して55玉と逃げるしかなく、以下73馬として、64成香でも64角でも同馬以下詰み。

というわけで作意は(途中図2から) 56玉、(途中図3)
20160117_t03.png
途中図3から67銀?とすると、46玉と逃げられて、銀を手放してしまったため詰まない。また途中図3から57銀?も67玉でダメ。
という訳で銀を温存したまま36龍とする。これに対して67玉と斜めに逃げると、攻方の龍も47龍と斜めに動かせるので早い。
【事実1】6段目の龍の王手に対しては、玉は7段目の同じ筋に逃げることができる。(例外あり)

(途中図3から) 36龍、57玉、37龍、(途中図4)
20160117_t04.png
先ほどと同様に、ここで56玉は67銀と打てて簡単。

(途中図4から) 66玉、46龍、67玉、47龍、(途中図5)
20160117_t05.png
先ほどと同様に、ここで66玉は77銀と打てる。今回は逃げ道が2つあるが、55玉は57龍。75玉は53馬以下。

(途中図5から) 76玉、56龍、77玉、57龍、(途中図6)
20160117_t06.png
今までと同様に、ここで76玉は87銀以下。
【事実2】7段目の龍の王手に対しては、玉は6段目の斜め上に逃げる必要がある。

(途中図6から) 86玉、66龍、87玉、96龍、77玉、97龍、(途中図7)
20160117_t07.png
87玉のとき、惰性で67龍?とすると98玉と逃げ込まれてしまう。96龍と回って折り返し、97龍と引けば、反転しているが今まで見てきた形と同様だ。

(途中図7から) 66玉、86龍、67玉、87龍、56玉、76龍、(途中図8)
20160117_t08.png
さて、ここが問題の場面。6段目の龍の王手に対しては、玉を真っ直ぐに動かすのが基本だったが……。

ここで57玉?とすると、以下77龍、46玉、73馬、64成香、(変化図1)となる。
20160117_h01.png
実はこの局面、作意の72手目と同じ局面である。馬鋸が始まってしまうため、手数短縮してしまうのだ。
したがって、63馬が動き出すのをできるだけ遅らせるため、玉方は46や37のラインを避けて逃げるのが最善だ。つまり、あえて47玉と斜めに逃げなくてはならない。

(途中図8から) 47玉、67龍、36玉、56龍、(途中図9)
20160117_t09.png
ここでも37玉?だと73馬、64成香、(変化図2)と進んだ局面が作意78手目に短絡する。
20160117_h02.png
したがって、先ほどと同様に27玉と斜めに逃げる。

(途中図9から) 27玉、16龍、37玉、(途中図10)
20160117_t10.png
ようやく馬鋸が始められそうだが、まだまだ油断は禁物。

ここで73馬?とすると、64角!という応手がある。(失敗図1)
20160117_f01.png
失敗図1から、
 ・17龍は、38玉、47銀、39玉、37龍、同角成…で逃れ。
 ・64同馬は、同成香、46角、47玉、27龍、46玉、57銀、55玉…で逃れ。
これらは91歩を持駒にした後でも詰まない。
したがって、作意は17龍、46玉としておいてから73馬とする。

(途中図10から) 17龍、46玉、73馬、(途中図11)
20160117_t11.png
作意は64成香だが、
 ・64角は、同馬、同成香、57銀以下。
 ・55成香は、57銀、36玉、16龍、37玉、55馬以下。
となってどちらも簡単に詰み。ここで重要な事実が判明する。
【事実3】龍が玉より右側にある場合は、玉が46に来たときに限り、73~91のラインから馬で王手することができる。

(途中図11から) 64成香、『26龍、47玉、27龍、56玉、36龍、57玉、37龍、66玉、46龍、67玉、47龍、76玉、56龍、77玉、57龍、86玉、66龍、87玉、96龍、77玉、97龍、66玉、86龍、67玉、87龍、56玉、76龍、(途中図12)
20160117_t12.png
63馬の形(途中図8)では馬の活用を遅らせるために47玉と逃げたが、ここでは既に馬が73~91のラインに居るため、57玉と逃げる方が手数が延びる。

(途中図12から) 57玉、77龍、46玉、66龍、47玉、67龍、36玉、(途中図13)
20160117_t13.png
さて、馬を動かせそうだが。

ここで72馬?とすると、54桂!という応手がある。(失敗図2)
20160117_f02.png
失敗図2から、56龍としても、37玉、57龍、26玉となり、以下
 ・46龍は同桂で逃れ。
 ・56龍は37玉で千日手で逃れ。
 ・27銀は15玉で、53龍が指せないため逃れ。
これらは91歩を持駒にした後も同様。
という訳で、36玉の形ではまだ馬は動かせない。

(途中図13から) 56龍、37玉、57龍、26玉、46龍、27玉』、72馬、(途中図14)
20160117_t14.png
作意は54成香だが、54桂は、同馬、同成香、19桂、18玉、16龍、17角、27銀以下。
ここでもう一つ重要な事実が判明。
【事実4】龍が玉より左側にある場合は、玉が27に来たときに限り、72~81のラインから馬で王手することができる。

ここからは、これらの事実に基づいて手順を進めていけば、収束の手前までは到達できる。

(途中図14から) 54成香、16龍、37玉、17龍、46玉、82馬、64成香、
『26龍…27玉』、81馬、54成香、16龍、37玉、17龍、46玉、91馬、64成香、
『26龍…27玉』、81馬、54成香、16龍、37玉、17龍、46玉、82馬、64成香、
『26龍…27玉』、72馬、54成香、16龍、37玉、17龍、46玉、73馬、64成香、(途中図15)

20160117_t15.png

馬鋸はここまで。もう一度龍追いをした後、玉を15に追い込んで収束に入るのだが、その直前でも破調がある。
(途中図15から) 『26龍、…77龍、46玉』、66龍、(途中図16)
20160117_t16.png
ここで、逃げ方は2通り。
 ①47玉、67龍、36玉、45銀、26玉、56龍、15玉、16歩、14玉、……
 ②37玉、57龍、26玉、27銀、15玉、16歩、14玉、……
実は②の方が作意なのであるが、一見、①の方が2手長くなりそうに見える。どうなるか見てみよう。

(途中図16から)47玉、67龍、36玉、45銀、26玉、56龍、15玉、16歩、14玉、13と、同玉、53龍、同金、15香、22玉、33角、32玉、42成桂、同金、同角成、同玉、33金、52玉、63銀成、同金、(変化図3)
20160117_h03.png
銀が45に居るので、変化図3から63同馬、同玉、72銀不成と進めたときに54から逃げられないため詰む。
一方、作意はどうかと言うと……。

(途中図16から)37玉、57龍、26玉、27銀、15玉、16歩、14玉、13と、同玉、53龍、同金、15香、22玉、33角、32玉、42成桂、同金、同角成、同玉、33金、52玉、63銀成、同金、(途中図17)
20160117_t17.png
変化図3と違って銀が27に居るので、63同馬では54から逃げられてしまい不詰。したがって、攻め方をちょっと工夫する必要がある。
(途中図17から)43金、51玉、61成桂、同玉、72銀不成、51玉、52金、同玉、63馬、同成香、同香成、41玉、42歩、32玉、33金、21玉、22香まで305手。
20160117_t18.png
72銀不成~63馬が好手。その後はいろいろ詰め方があるが、それほど気にする必要は無いだろう。

■感想、参考作品
趣向については、「龍追い+馬鋸」の形式自体が非常に珍しく、その中でも支え駒なしでの龍追いは極めて独創性が高い。そして何より、趣向手順中の馬鋸のタイミングが巧妙に限定されていることに感心した。また、これらを理解した上で短評を再読すると、各氏の短評で触れられている箇所もよくわかる。

最後に、参考作品を下記に挙げておく。いずれも独創的で面白い作品。
 ・玉が左右に移動する+馬鋸:河原泰之「SWING II」 403手 詰パラ1993.5
 ・支え駒が少ない龍追い:井上徹也 305手 詰パラ2011.3
 ・龍追い+馬鋸:山崎健「龍馬伝II」 341手 詰パラ2012.7



自分が理解できるように書いたら、有り得ないほど長くなってしまった。削るのも手間がかかるのでこのまま行かせていただく。
ちなみに#01と書いているが、#02以降もあるかどうかは未定。
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  1. 2016/01/17(日) 18:00:00|
  2. 勝手に解説
  3. | コメント:4

変化別詰に関する考察

前回の記事からちょっと間が空いてしまいました。書くのが遅いのもあるのですが、やはり休みが終わるとなかなか時間が取れません。今後は何とか週1のペースで記事が上げられれば。


今回のテーマは変化別詰(以降では「変別」と書く)である。

まず変別には二通りある。
①作意と等位の変化における別詰
 いわゆる変同における変別。これは解答審査としては正解扱いになる。
②作意よりも劣位の変化における別詰
 こちらがときどき議論になるケース。

自分は、②の解答は誤解扱いにすべきと考えている。
なぜなら、作者は変化が割り切れるように苦心しているのであり、そこはちゃんと味わってほしいし、どちらでも同じと思ってほしくない。そして、これを見抜けていない解答者を担当者の裁量で正解扱いとするのは、作者の苦労を無にする行為であるからだ。

せっかくなので、詰パラ1月号の結果稿から具体例で見てみよう。

武島 広秋 氏作 (詰パラ2015年10月号 中学校)
20160110_01.png
49金、同と、56角、39玉、28銀、同玉、38金、(イ)同歩成、47龍、37と、38龍まで11手。
(イ)18玉は、45角、29玉、49龍まで11手駒余り。
(イ)29玉は、26龍、18玉、(a)45角まで11手駒余り。
  (a)のところ、27龍(or28龍)で詰めるのが変別。

20160110_0101.png
(手順A)…(図1.1から) 同歩成、47龍、37と、38龍まで11手。
(手順B)…(図1.1から) 29玉、26龍、18玉、27龍まで11手。

手順Bの解答は、矛盾点がいくつもある。
(その1)3手目56角は、(イ)で18玉と逃げる変化で45角とするための限定打となっている。つまり、3手目83角と打つと38金に対して18玉で逃れ。そして3手目56角の解答をしているということは、45角の筋が見えていることになる。しかし(イ)29玉の順では45角が見えていなかったのだろうか?
(その2)作意順も読めている、と解釈した場合、手順Aと手順Bの2つの筋を比較して手順Bを選択したことになる。しかし、作意っぽくない方を選択するだろうか? つまり、手順Aの10手目「37と」を見落としている可能性が高い。

「変別○」にする場合の最低限の判断基準として「作意順も読めている」ことが大前提となるが、手順Bの解答ではその最低限すら満たしていないと推察されるのである。

有吉 弘敏 氏作 (詰パラ2015年10月号 高等学校)
20160110_02.png
19龍、29銀、48銀、同玉、28龍、(イ)38銀不成、47龍、59玉、19龍、(ロ)39銀打、同龍、同銀不成、68銀、同と、69馬、同玉、49龍まで17手。
(ロ)49銀打は、同龍寄、同銀成、68銀、同と、(a)57龍、58歩、68馬まで17手駒余り。
  (a)のところ、69馬、同と、58龍(or57龍)で詰めるのが変別。

49が塞がっていると、57龍と寄る手があって駒が余る。

こちらの変化別詰は作意と似通っており、恐らく39銀打と合駒した場合も読めていると思われる。つまり、この変別を○とする最低限の判断基準は満たしている。それでもやはり、作家の立場から見た場合、この解答は誤解扱いである。
理由は以下のとおりである。
(ロ)で49銀打でも良い、とした場合、その手前の(イ)の箇所で38銀成としておいてから(ロ)で49銀、同龍寄、同成銀…と進めても同じことになってしまう。作家としては、ここが非限定となるのは作品として致命的な欠陥であり、絶対に消しておかなければならない。
作意手順では12手目に銀不成とする必要があるため、6手目(イ)でも銀不成限定となる。非常に美味しい内容であり、解答者もこちらで味わってほしい、と考えるのは作家に共通の思いであるはずだ。
「駒が余る詰め方があるが、作意順と同様に進めても詰む」というのは、変化の割り切り方としてはやや苦しいところだが、作者としても苦渋の選択だったのだろう。そして、素材から発表まで30年!も要したというのも重みを感じる。


ちなみに解答の採点は、図1のケースが正解扱い、図2のケースが誤解扱い。
判断基準は誌面内で統一すべきとも思うが、そもそも作品個別で判断しなければならない以上、統一は難しいか。



■有吉氏作についての補足
ここからの内容は変別とは関係が無い。載せるかどうか迷ったが、気付いてしまったので書くことにする。
有吉氏作について、玉方26銀・35銀の2枚が重い配置で気になるところではある。しかしこの作者が選択した以上、これがベストなのだろうなぁと思って調べていたところ、どうやら下図でも良いようだ。
20160110_03.png
ポイントは2点。
 (1)図2で玉方35銀を省くと、7手目46龍が成立する。以下47歩合、同龍以下作意をなぞって合駒が余ってしまう。
 (2)図2で玉方26銀を省くと、5手目47龍、39玉、37龍、38銀打、28龍引、48玉、49歩以下が成立する。
玉方26銀・35銀に代えて攻方46歩を置くことで、これらを同時に防ぐことができる。
清涼詰ではなくなってしまうが。

■【追記】有吉氏作についての補足 の補足
作者のコメントによると、図3の案では、9手目19龍(図4)に対する応手で微妙なところがあるらしい。
20160110_04.png
作意は39銀打、同龍、同銀不成、68銀以下。しかし、29銀打合、同龍、39銀打合という応手がある。
この後、最短で詰ます手順は、68銀、同と、69馬、同玉、49龍まで(17手駒余らず)。この順を回避するために銀を品切れにすることで対策したとのこと。
私見ではあるが、下線部分の応手については、最初の29銀打合は無駄合と見なして良いと思う。
理由は、単に39銀打合とした場合と比較して、「何らかの詰め筋を防いでいる」ということが無く、単に2手延命するだけの応手であるから。
どう解釈するか難しいところではあるが。
  1. 2016/01/10(日) 02:00:00|
  2. 考察
  3. | コメント:5

打診手に関する考察

今回扱うテーマは「成・不成打診手」(以下では単に「打診手」と表記する)である。
まずは、下図の7手詰を御覧いただきたい。
20160103_01.png
(※まったく同一手順の作品があったはずだが、見つけられず。)
作意:26桂、同飛不成、25角、同飛、15歩、同飛、26桂 まで7手。

初手いきなり25角(または36角、25歩合、同角としても同じ)は、同飛成! 15歩、同龍で、26に効きがあって詰まない。
このため、まず26桂と打つ。これに対して同飛成ならば15歩、同龍、23角まで。
したがって同飛不成と取るが、これで成ることができなくなったので、25角を決行できることになる。

さて、今回の考察の焦点は、「初手26桂は打診手か?」である。

この判断をする前に、「明らかに打診手である」と断言できる例を挙げさせていただく。

若島 正 氏作 (詰パラ2014年11月号 短期大学)
20160103_02.png
54桂、同歩、17馬、同角不成、73歩成、51玉、52歩、同玉、82龍、72歩、同龍、62歩、(図3)
図3までの12手も不成あり中合ありと虚々実々の応酬なのだが、本題と無関係のため説明は省略。
20160103_03.png

ここで、64桂? とすると、51玉で次図。
20160103_03fail1.png

ここから攻め方は2通りあるが、
(X)62龍…同角不成なら詰むが、同角成!とされて詰まない。
(Y)62と…同角成なら詰むが、同角不成!とされて詰まない。

これは、玉方が成・不成を選択できるからである。作意は、
図3から53歩!とする。(図4)
20160103_04.png

これに対し、玉方は、同角成または同角不成と態度を決めなければならない。
(a)同角成、64桂、51玉、62と(Y)、同馬、52歩、同馬、同龍まで21手駒余り。こちらは変化。
(b)同角不成、64桂、51玉、62龍(X)、同角、52歩、61玉、72とまで21手。こちらが作意。

さて、図4の53歩が打診手であることは議論の余地が無い。そして、機構をもっと詳しく見てみると、次のような構造になっていることがわかる。

逃れのパターン
打診を経由しない場合に2通り(これをXとYとする)の攻め方があり、玉方のある駒pに対して、
X →p成  …逃れ。
Y →p不成 …逃れ。

詰みのパターン
打診Zを行った場合、
Z ―→ p成  → Y …詰み。
└→ p不成 → X …詰み。
で詰み。

図1について、これを当てはめてみよう。
p=27飛、Z=26桂 は良いとして、

逃れのパターン
X=25角  → 27飛が成で逃れ。
Y=16歩? → 27飛が不成で逃れ??? そもそも16歩は最初から打歩詰である。

詰みのパターン
26桂を打った場合、
26桂 ―→ 同飛成  → Y=16歩 …詰み。
└→ 同飛不成 → X=25角 …詰み。

図1においては、「逃れのパターン」における攻め方Yが存在していない! 単に「すぐに攻め方Xを選ぶと逃れる」というだけである。
「詰みのパターン」においてはXもYも存在しているため、漠然と眺めただけでは違いがわかりにくいが、図1の機構と図3の機構は似て非なるものであることがわかるだろう。

さて、改めて問おう。図1の初手26桂は打診手か?





勿体つけても仕方がないので正解を書くと、「“打診手”をどのように定義するか、に依存する。」である。

(1)「打診手」を「成または不成を強制的に確定させる手」と定義した場合[広義の打診手]
図1の初手26桂は打診手である。

(2)「打診手」を「2種類の攻め方に対して、玉方に成・不成を選択されて逃れることを回避するため、事前に成または不成を強制的に確定させる手」と定義した場合[狭義の打診手]
図1の初手26桂は打診手とは言えない。

長々と書いてきた割には当たり前の結論になってしまった。


おまけ
ここまでを踏まえて、図巧第38番について考えてみよう。人によってはこちらの方がメインになるかも知れない。
例によって、手順の詳細な解説はしない。詰将棋博物館参照。
20160103_05.png
23角、55玉、(図6)
20160103_06.png

図6から、いきなり35龍? とすると、同角成で馬が強くて詰まない(失敗図2)。
20160103_06fail2.png

そこで、(図6から)46銀!とする。
20160103_07.png
(a)同角成なら、56歩、同馬、35龍以下詰み。
(b)同角不成なら、35龍、同角、56歩以下詰み。
ちなみに作意は同銀で、その後35龍、同銀、56歩と進み、以下詰み(これ以降は省略)。

さて、図7の46銀は打診手か?
作意が同銀となっているので非常にわかりにくいのだが、機構としては図1と同様である。
すなわち、図7の46銀は、「広義の打診手である。狭義の打診手ではない。」が正しい。

ちなみに、図巧38番が打診手の一号局かどうかという議論もあるようだが、広義の打診手の一号局であるとは思う。しかし現在の目から見ると、打診に関しての機構自体は簡単に実現可能であり、それほど希少価値はない。
ただし、打診を行った手に対し「成でも不成でもなく第3の手で応じる」という展開(これに取らず手筋も絡む)が非常に珍しく、本局の価値もまさにこの点にあると言える。

「狭義の打診手」に関しても、もっと議論ができれば良いのだが、作例がすぐに出て来ない(泣)。現時点で思い浮かぶのはこれくらい。情報求む。
【追記】
目にとまった作品の紹介記事を書いた。→打診手に関する考察(2)
  1. 2016/01/03(日) 00:01:00|
  2. 考察
  3. | コメント:6

図巧1番の序奏に関する考察

記念すべき最初の記事の題材として、図巧第1番を取り上げる。「今さら図巧1番かよ」と思われるかもしれないが。

■はじめに
【図1 (初形)】
20160101_001_shokei.png

まずお断りしておくが、ここでは作意手順の詳しい解説はしない。柿木将棋の将棋図巧フォルダを開くか、詰将棋博物館を参照するかしてほしい(笑)。
手順としては、
・飛の遠打と飛合により角を移動させる
・趣向の目的は打歩詰の回避である
という点が、視覚的にも内容的にもインパクトがあり、それでいてストーリーがわかりやすく、一度見たら忘れることはないであろう。
そしてそのわかりやすさ故に、「図巧の中では初心者向け」「図巧100局中の好きな作を聞かれて第1番を挙げる人はわかってない」などとも言われているようだ。
そういった方々のために、本記事では、趣向手順に入る前の序奏について考察してみようと思う。

■パターン1 初手と最終手が同じ駒
(以下では作意手順を太字で示す)
(図1から)54銀、

【図2 (初手54銀まで)】
20160101_002_1teme.png

何気ないようだが、非常に意味深な1手。というのは、この54銀は、収束でトドメの駒となるからである。(ついでに言うと、飛打飛合の趣向手順中に65の逃げ道を塞ぐ駒でもある)

【図3 (65手目63銀成まで)】
20160101_003_65teme.png

(65手目から)63銀成、61玉、72と、51玉、52成銀まで。初手で王手をかけた駒がトドメの駒にもなっている。
いわゆる「伏線」とは少し違うが、序と収束に関連性を持たせている。これは偶然ではなく、明らかに序・趣向・収束を結ぶストーリーを強く意識して創られている。

■パターン2 序奏で活用した駒を収束でも活用する
(図2から)75玉、87桂、

【図4 (3手目87桂まで)】
20160101_004_3teme0.png

ここも何気ないが、注目したいところ。この87桂は、飛打飛合のメイン趣向中において、95馬の支えと75を塞ぐための重要な駒となる。そして収束では、75桂と跳ね出して56角の効きを通す役割も担っている。

【図5 (43手目75桂まで)】
20160101_005_43teme0.png

つまり、序での桂跳ねと収束での桂跳ねを呼応させていることがわかる。ここでも明らかにストーリーが意識されている。

■パターン3 趣向部~収束部と同じ形式の手順が現れる
(図4から)86玉、

【図6 (4手目86玉まで)】
20160101_006_4teme.png

ここで、少しだけ紛れにも目を向けてみよう。
図6から95角成?とすると、76玉と逃げられて打歩詰。ここまで来てから打開しようとしてあれこれ工夫してもうまくいかない。

【失敗図1 (図6から95角成?と進めた)】
20160101_007_fail1.png

作意は、事前に取り歩駒を呼んでおく。

(図6から)66龍、同龍、95角成、76玉、77歩、

【図7 (9手目77歩まで)】
20160101_008_9teme0.png

「事前に」と言っても、たった2手前なのであるが、注目すべきは「事前に取り歩駒を呼んでおく」という点である。

(図7から)同龍、同馬、85玉、

【図8 (12手目85玉まで)】
20160101_009_12teme.png

作意はここから15飛、25飛合…と趣向手順が始まるが、あえて84飛?と打ってみよう。
(図8から)84飛?、同玉、95馬、83玉、82金、同歩、84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、72金、91玉、(次図)

【失敗図2 (図8から84飛?と進めた)】
20160101_010_fail2.png

打歩詰。ここまで来てから打開しようとしてあれこれ工夫してもうまくいかない。
したがって、飛打飛合を利用して16角を56まで呼び出しておくのが本作のメイン趣向および意味付けである、というのは周知のとおり。(図9参照)

【図9 (53手目92歩まで)】
20160101_011_53teme.png

さて、もうおわかりだろう。序の66龍~77歩と打つまでの手順は、メイン趣向の15飛~収束で92歩と打つまでの手順の相似形となっているのだ。ここでも序・趣向・収束を結ぶストーリーが強く意識されている。

まとめると、初手54銀~12手目86玉の12手の間に、3パターンのそれぞれ異なった、趣向・収束との繋がりを含ませているのである。
何と凝った作りであろうか!

更に付け加えると、この54銀~87桂~66龍を成立させるために置かれた攻方57龍と玉方36龍の存在によって、ポツンと離れた16角の存在の不自然さが軽減されている点にも注目していただきたい。
(配置については、駒場さんが指摘されていた

ちなみに、初形玉位置の変更を可能とした場合に、無双30番の金消去のような伏線を入れられないか考えてみたが、難しいようだ。もし入れられたとしても、序盤だけしか働かない駒を何枚か配置する必要がありそう。本作の場合、趣向部分と収束を最小限の駒数で実現しており、働きの悪い駒を新たに配置してまで伏線を入れようとするのは愚の骨頂であろう。

■おわりに
今回は、図巧第1番の序奏という、おそらく今まであまり語られていなかった部分に着目してみた。
中長編の作品については、もちろんメインとなるテーマや趣向も重要であるが、それだけでなく、序奏と収束の繋がりについても気を配って鑑賞していきたい。そしてこれは創作の際も同様である。
もっとも、序奏と収束が分離していることは悪いことではない。例えば、『ミクロコスモス』では趣向部分と収束が完全に分離しているのが成功の要因と考えられる。他にも、名作とされる詰将棋において、序奏と収束で繋がりが薄いものは何百作もありそうだ。
いずれにしても、本記事を読んだ方にとって、何らかの新たな発見や作図のきっかけとなってくれれば嬉しい。
  1. 2016/01/01(金) 00:02:00|
  2. 考察
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本ブログでは、詰将棋に関して、主に作家の観点から考察していきたいと考えています。
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  1. 2016/01/01(金) 00:01:00|
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