詰将棋考察ノート

詰将棋に関する考察あれこれ。

図巧1番の序奏に関する考察

記念すべき最初の記事の題材として、図巧第1番を取り上げる。「今さら図巧1番かよ」と思われるかもしれないが。

■はじめに
【図1 (初形)】
20160101_001_shokei.png

まずお断りしておくが、ここでは作意手順の詳しい解説はしない。柿木将棋の将棋図巧フォルダを開くか、詰将棋博物館を参照するかしてほしい(笑)。
手順としては、
・飛の遠打と飛合により角を移動させる
・趣向の目的は打歩詰の回避である
という点が、視覚的にも内容的にもインパクトがあり、それでいてストーリーがわかりやすく、一度見たら忘れることはないであろう。
そしてそのわかりやすさ故に、「図巧の中では初心者向け」「図巧100局中の好きな作を聞かれて第1番を挙げる人はわかってない」などとも言われているようだ。
そういった方々のために、本記事では、趣向手順に入る前の序奏について考察してみようと思う。

■パターン1 初手と最終手が同じ駒
(以下では作意手順を太字で示す)
(図1から)54銀、

【図2 (初手54銀まで)】
20160101_002_1teme.png

何気ないようだが、非常に意味深な1手。というのは、この54銀は、収束でトドメの駒となるからである。(ついでに言うと、飛打飛合の趣向手順中に65の逃げ道を塞ぐ駒でもある)

【図3 (65手目63銀成まで)】
20160101_003_65teme.png

(65手目から)63銀成、61玉、72と、51玉、52成銀まで。初手で王手をかけた駒がトドメの駒にもなっている。
いわゆる「伏線」とは少し違うが、序と収束に関連性を持たせている。これは偶然ではなく、明らかに序・趣向・収束を結ぶストーリーを強く意識して創られている。

■パターン2 序奏で活用した駒を収束でも活用する
(図2から)75玉、87桂、

【図4 (3手目87桂まで)】
20160101_004_3teme0.png

ここも何気ないが、注目したいところ。この87桂は、飛打飛合のメイン趣向中において、95馬の支えと75を塞ぐための重要な駒となる。そして収束では、75桂と跳ね出して56角の効きを通す役割も担っている。

【図5 (43手目75桂まで)】
20160101_005_43teme0.png

つまり、序での桂跳ねと収束での桂跳ねを呼応させていることがわかる。ここでも明らかにストーリーが意識されている。

■パターン3 趣向部~収束部と同じ形式の手順が現れる
(図4から)86玉、

【図6 (4手目86玉まで)】
20160101_006_4teme.png

ここで、少しだけ紛れにも目を向けてみよう。
図6から95角成?とすると、76玉と逃げられて打歩詰。ここまで来てから打開しようとしてあれこれ工夫してもうまくいかない。

【失敗図1 (図6から95角成?と進めた)】
20160101_007_fail1.png

作意は、事前に取り歩駒を呼んでおく。

(図6から)66龍、同龍、95角成、76玉、77歩、

【図7 (9手目77歩まで)】
20160101_008_9teme0.png

「事前に」と言っても、たった2手前なのであるが、注目すべきは「事前に取り歩駒を呼んでおく」という点である。

(図7から)同龍、同馬、85玉、

【図8 (12手目85玉まで)】
20160101_009_12teme.png

作意はここから15飛、25飛合…と趣向手順が始まるが、あえて84飛?と打ってみよう。
(図8から)84飛?、同玉、95馬、83玉、82金、同歩、84歩、92玉、81銀、91玉、82と、同玉、72金、91玉、(次図)

【失敗図2 (図8から84飛?と進めた)】
20160101_010_fail2.png

打歩詰。ここまで来てから打開しようとしてあれこれ工夫してもうまくいかない。
したがって、飛打飛合を利用して16角を56まで呼び出しておくのが本作のメイン趣向および意味付けである、というのは周知のとおり。(図9参照)

【図9 (53手目92歩まで)】
20160101_011_53teme.png

さて、もうおわかりだろう。序の66龍~77歩と打つまでの手順は、メイン趣向の15飛~収束で92歩と打つまでの手順の相似形となっているのだ。ここでも序・趣向・収束を結ぶストーリーが強く意識されている。

まとめると、初手54銀~12手目86玉の12手の間に、3パターンのそれぞれ異なった、趣向・収束との繋がりを含ませているのである。
何と凝った作りであろうか!

更に付け加えると、この54銀~87桂~66龍を成立させるために置かれた攻方57龍と玉方36龍の存在によって、ポツンと離れた16角の存在の不自然さが軽減されている点にも注目していただきたい。
(配置については、駒場さんが指摘されていた

ちなみに、初形玉位置の変更を可能とした場合に、無双30番の金消去のような伏線を入れられないか考えてみたが、難しいようだ。もし入れられたとしても、序盤だけしか働かない駒を何枚か配置する必要がありそう。本作の場合、趣向部分と収束を最小限の駒数で実現しており、働きの悪い駒を新たに配置してまで伏線を入れようとするのは愚の骨頂であろう。

■おわりに
今回は、図巧第1番の序奏という、おそらく今まであまり語られていなかった部分に着目してみた。
中長編の作品については、もちろんメインとなるテーマや趣向も重要であるが、それだけでなく、序奏と収束の繋がりについても気を配って鑑賞していきたい。そしてこれは創作の際も同様である。
もっとも、序奏と収束が分離していることは悪いことではない。例えば、『ミクロコスモス』では趣向部分と収束が完全に分離しているのが成功の要因と考えられる。他にも、名作とされる詰将棋において、序奏と収束で繋がりが薄いものは何百作もありそうだ。
いずれにしても、本記事を読んだ方にとって、何らかの新たな発見や作図のきっかけとなってくれれば嬉しい。
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  1. 2016/01/01(金) 00:02:00|
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