詰将棋考察ノート

詰将棋に関する考察あれこれ。

詰工房の課題について

詰工房常連の誰かが書いてくれるかな、と思っていたが、勝手に書かせていただく。


今回の話題は、詰パラ2月号のP47、詰工房の課題についてである。
「打歩詰に関係する手筋。ただし、作意手順で攻方は歩を打たない」
2016年9月の詰工房で決まった課題。一見逆説的な内容である。
そしてこの課題、「盤上に適当に駒を並べてみたら出来ていた」ということはまず有り得ない。
強い意志を持って手順を構築する必要がある。

代表的な作例をいくつか挙げていこう。
■2015.11 My Cube 第n回裏短コン 馬屋原剛 氏作「欺きの一角獣」
20170206_1.png
13角不成、36角不成、26桂、25玉、45飛、同角、35角成 まで7手。

打歩詰に関係する手筋と言えば不成
そして、本作は「打歩に関係する双方不成」「作意では歩を打たない」を7手で実現している。
同様のことをやろうとすると、本作が比較対象となってしまう、という恐ろしい作。
詳しい解説はこちらで。
解説と短評でほぼ語り尽くされているが、1点だけ。
4手目26同香は、43飛成、25玉、23龍まで7手駒余り。
(26同香に対し36香としても詰むが、以下35歩合が無駄合か有効合かという面倒な議論が発生する)

■第10回詰将棋解答選手権チャンピオン戦(2013.3) ③ 若島正 氏作
20170206_2.png
78桂、同と、96龍、86銀、同龍、57玉、66龍、同玉、57銀、同玉、
47龍、66玉、84馬、同金、67龍、75玉、65龍 まで17手。

不利合駒も打歩に関する手筋。それを中合で行う、というだけでも珍しいのだが、打歩の筋をすべて変化に隠した構成にしているのは他に見たことがない。
同様の条件の後続作が発表されないのは、本作の完成度が高すぎるからかもしれない。

■詰パラ1952.2 栗原壽郎 氏作
20170206_3.png
11飛、92玉、21角成、96角、同香、同桂、81角、同玉、54馬、92玉、
81龍、同玉、71歩成、同玉、74龍、61玉、71龍、同玉、72銀 まで19手。

「打歩詰を回避するための、遠打+効き筋遮断の複合技」を「ブルータス手筋」と呼ぶのは今では常識だが、そのきっかけとなった作品。
初手・3手目は、4手目96歩合の変化を詰ますためだが、作意は96角合となるのが凝った展開。
当時の解説はこちらで。
なお、ブルータス手筋の1号局としては、看寿の将棋図巧49番91番あたりが有力。

■(番外)詰棋めいと創刊号(1984.6) 愛 上夫 氏作
20170206_4.png
66飛76桂69玉、77桂、同銀、97玉、89桂 まで7手。

初手にいきなり69玉は68歩と打てるため失敗。ところが、わざわざ76桂と打たせて王手を掛けさせてから69玉とすると、68歩は打歩詰となるため打てない、という仕組み。
攻方玉の打歩詰を含みにした作。一応このパターンも「作意手順で攻方は歩を打たない」ではある。
しかし、そもそも今回の課題は「打歩詰なのに歩を打つ手が出て来ない」という、一見パラドキシカルな内容を実現せよ、というのがポイントである、と考える。
攻方玉の打歩詰利用ということは、攻方が歩を打つ手が出て来ないのは当たり前であり、全然パラドキシカルではない。
したがって、今回の課題にはあまり相応しくない、というのが個人的な意見。


以上、条件を満たす作例をいくつか挙げてみた。参考になれば幸いである。
そして願わくば、これらの作例に引けを取らない出来の作を見てみたい。




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  1. 2017/02/07(火) 00:01:00|
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