詰将棋考察ノート

詰将棋に関する考察あれこれ。

変化別詰に関する考察

前回の記事からちょっと間が空いてしまいました。書くのが遅いのもあるのですが、やはり休みが終わるとなかなか時間が取れません。今後は何とか週1のペースで記事が上げられれば。


今回のテーマは変化別詰(以降では「変別」と書く)である。

まず変別には二通りある。
①作意と等位の変化における別詰
 いわゆる変同における変別。これは解答審査としては正解扱いになる。
②作意よりも劣位の変化における別詰
 こちらがときどき議論になるケース。

自分は、②の解答は誤解扱いにすべきと考えている。
なぜなら、作者は変化が割り切れるように苦心しているのであり、そこはちゃんと味わってほしいし、どちらでも同じと思ってほしくない。そして、これを見抜けていない解答者を担当者の裁量で正解扱いとするのは、作者の苦労を無にする行為であるからだ。

せっかくなので、詰パラ1月号の結果稿から具体例で見てみよう。

武島 広秋 氏作 (詰パラ2015年10月号 中学校)
20160110_01.png
49金、同と、56角、39玉、28銀、同玉、38金、(イ)同歩成、47龍、37と、38龍まで11手。
(イ)18玉は、45角、29玉、49龍まで11手駒余り。
(イ)29玉は、26龍、18玉、(a)45角まで11手駒余り。
  (a)のところ、27龍(or28龍)で詰めるのが変別。

20160110_0101.png
(手順A)…(図1.1から) 同歩成、47龍、37と、38龍まで11手。
(手順B)…(図1.1から) 29玉、26龍、18玉、27龍まで11手。

手順Bの解答は、矛盾点がいくつもある。
(その1)3手目56角は、(イ)で18玉と逃げる変化で45角とするための限定打となっている。つまり、3手目83角と打つと38金に対して18玉で逃れ。そして3手目56角の解答をしているということは、45角の筋が見えていることになる。しかし(イ)29玉の順では45角が見えていなかったのだろうか?
(その2)作意順も読めている、と解釈した場合、手順Aと手順Bの2つの筋を比較して手順Bを選択したことになる。しかし、作意っぽくない方を選択するだろうか? つまり、手順Aの10手目「37と」を見落としている可能性が高い。

「変別○」にする場合の最低限の判断基準として「作意順も読めている」ことが大前提となるが、手順Bの解答ではその最低限すら満たしていないと推察されるのである。

有吉 弘敏 氏作 (詰パラ2015年10月号 高等学校)
20160110_02.png
19龍、29銀、48銀、同玉、28龍、(イ)38銀不成、47龍、59玉、19龍、(ロ)39銀打、同龍、同銀不成、68銀、同と、69馬、同玉、49龍まで17手。
(ロ)49銀打は、同龍寄、同銀成、68銀、同と、(a)57龍、58歩、68馬まで17手駒余り。
  (a)のところ、69馬、同と、58龍(or57龍)で詰めるのが変別。

49が塞がっていると、57龍と寄る手があって駒が余る。

こちらの変化別詰は作意と似通っており、恐らく39銀打と合駒した場合も読めていると思われる。つまり、この変別を○とする最低限の判断基準は満たしている。それでもやはり、作家の立場から見た場合、この解答は誤解扱いである。
理由は以下のとおりである。
(ロ)で49銀打でも良い、とした場合、その手前の(イ)の箇所で38銀成としておいてから(ロ)で49銀、同龍寄、同成銀…と進めても同じことになってしまう。作家としては、ここが非限定となるのは作品として致命的な欠陥であり、絶対に消しておかなければならない。
作意手順では12手目に銀不成とする必要があるため、6手目(イ)でも銀不成限定となる。非常に美味しい内容であり、解答者もこちらで味わってほしい、と考えるのは作家に共通の思いであるはずだ。
「駒が余る詰め方があるが、作意順と同様に進めても詰む」というのは、変化の割り切り方としてはやや苦しいところだが、作者としても苦渋の選択だったのだろう。そして、素材から発表まで30年!も要したというのも重みを感じる。


ちなみに解答の採点は、図1のケースが正解扱い、図2のケースが誤解扱い。
判断基準は誌面内で統一すべきとも思うが、そもそも作品個別で判断しなければならない以上、統一は難しいか。



■有吉氏作についての補足
ここからの内容は変別とは関係が無い。載せるかどうか迷ったが、気付いてしまったので書くことにする。
有吉氏作について、玉方26銀・35銀の2枚が重い配置で気になるところではある。しかしこの作者が選択した以上、これがベストなのだろうなぁと思って調べていたところ、どうやら下図でも良いようだ。
20160110_03.png
ポイントは2点。
 (1)図2で玉方35銀を省くと、7手目46龍が成立する。以下47歩合、同龍以下作意をなぞって合駒が余ってしまう。
 (2)図2で玉方26銀を省くと、5手目47龍、39玉、37龍、38銀打、28龍引、48玉、49歩以下が成立する。
玉方26銀・35銀に代えて攻方46歩を置くことで、これらを同時に防ぐことができる。
清涼詰ではなくなってしまうが。

■【追記】有吉氏作についての補足 の補足
作者のコメントによると、図3の案では、9手目19龍(図4)に対する応手で微妙なところがあるらしい。
20160110_04.png
作意は39銀打、同龍、同銀不成、68銀以下。しかし、29銀打合、同龍、39銀打合という応手がある。
この後、最短で詰ます手順は、68銀、同と、69馬、同玉、49龍まで(17手駒余らず)。この順を回避するために銀を品切れにすることで対策したとのこと。
私見ではあるが、下線部分の応手については、最初の29銀打合は無駄合と見なして良いと思う。
理由は、単に39銀打合とした場合と比較して、「何らかの詰め筋を防いでいる」ということが無く、単に2手延命するだけの応手であるから。
どう解釈するか難しいところではあるが。
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  1. 2016/01/10(日) 02:00:00|
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コメント

補足

ほっと様
はじめまして。自作をとりあげていただきありがとうございます。創作の過程について補足させていただきます。
26銀、35銀の2枚の銀配置ですが、指摘の通り重い配置です。10手目から29銀打合、同龍、39銀打合という応手に対して変同を回避できず、やむを得ず銀を品切れにするという対策をせざるをえませんでした。
また当初は、攻方の龍は17に配置して玉方を35香+37歩型として、初手から48銀とすると28龍には38歩成で逃れるという図でしたが、さらに2枚の銀配置は、やりすぎのため諦めました。
なかなかうまくいかないものです。
  1. URL |
  2. 2016/01/10(日) 18:10:52 |
  3. 有吉弘敏 #-
  4. [ 編集 ]

担当者の見解

 はじめまして、中学校担当の中島です。たまたまこの記事を見掛けましたので、私がこの変別解を誤解にしなかった理由について述べさせて頂きます。

 私は、通常変別解は×と言う現在通用しているルールに従って採点しているのですが、この作品の場合は○と判断しました。その理由は、この変別解自体が必ずしも作意の劣位変化とは言えないと思ったからです。つまり最終手で45角とすれば駒余りなので作意でないのは明らかですが、最終手余詰が許容されている以上、こちらを作意と同等の変同順と扱う方が妥当ではないか、という判断です。

 もう少し別の言い方をすると、仮にこの順が作意順だったとして、最終手45角までの駒余り順を答えた解答があったとしたら正解になるはずです。最終手余詰は許容されて作品のキズにはならないとされていますが、それはあくまで作品価値に関する考え方であって、解答審査の場合にそれを持ち込むのはファアではない、と言うより間違いである、と私は考えますし、あまりに作者よりの判断でしょう。

 それと結果稿に書きましたが、作意に現れる37とは誰もが認める好手とは言えず、むしろ「ズルイ」など拒否反応を示す解答もいくつかありましたから、どちらが作意にふさわしいか、など簡単には言えないと思います。どちらの順も見えていて、こちらの方がスッキリして作意らしい、と言う判断も十分あると思いますね。

 まとめると、作者の立場やマニア的考え方はほっと様の見解に近いと思いますし、私自身一詰将棋ファンとしては、この変別は×だよなあ、と思っているのです。しかし、考え方や価値判断は人それぞれで、より客観的な見地から○にした、と言うのが真相です。解答者の立場からは、今回のケースを×にされるのは辛いと思いますが。
  1. URL |
  2. 2016/01/10(日) 20:40:38 |
  3. 中島清志 #-
  4. [ 編集 ]

Re: 補足

有吉様
ほっとです。コメントありがとうございます。

> はじめまして。自作をとりあげていただきありがとうございます。創作の過程について補足させていただきます。
> 26銀、35銀の2枚の銀配置ですが、指摘の通り重い配置です。10手目から29銀打合、同龍、39銀打合という応手に対して変同を回避できず、やむを得ず銀を品切れにするという対策をせざるをえませんでした。

個人的には、10手目29銀打合、同龍、39銀打合という応手については、最初の29銀打合は無駄合と見なして良いと思います。
理由は、単に39銀打合とした場合と比較して、何らかの詰め筋を防いでいる、ということが無いからです。

> また当初は、攻方の龍は17に配置して玉方を35香+37歩型として、初手から48銀とすると28龍には38歩成で逃れるという図でしたが、さらに2枚の銀配置は、やりすぎのため諦めました。
> なかなかうまくいかないものです。

なるほど、そんな案もありましたか。当たり前ですが、あらゆる取捨選択をして、その結果が発表図になっているのですね。
  1. URL |
  2. 2016/01/10(日) 21:33:20 |
  3. ほっと #-
  4. [ 編集 ]

Re: 担当者の見解

中島様
長文コメントありがとうございます。ほっとです。

私の書いた記事は作家側の視点からだけしか考えていない(解答者側の視点は考慮していない)ため、かなり偏っていると思います。

>
>  まとめると、作者の立場やマニア的考え方はほっと様の見解に近いと思いますし、私自身一詰将棋ファンとしては、この変別は×だよなあ、と思っているのです。しかし、考え方や価値判断は人それぞれで、より客観的な見地から○にした、と言うのが真相です。解答者の立場からは、今回のケースを×にされるのは辛いと思いますが。

昨年10月号の中学校の出題コーナーを見直したら「最近は解答者の立場も尊重すべきと思っている」と書かれていますね。
難しいところですが、作者の立場やマニア的考え方に基づいて採点しても問題無かったと思いますよ。
  1. URL |
  2. 2016/01/10(日) 22:57:01 |
  3. ほっと #-
  4. [ 編集 ]

変別採点

私は変別は完全×派です。変別の解答をして○をされると、「なめてんの?」と思ってしまいます。でも他人の変別解答が○になっていてもなんとも思いません。またある作品について正解手順を答えよというのも単なる一つの問題形式ならば、初手だけ答えれば正解、もしくは正解手順以外に5手目の変化も記述しないと加点しない、という形式があったとしてそれもありだと思います。結局出題する側が一番良いように決めればいいんじゃないかと思います。それに対していやなら極端な話拒否すればいいだけですし。そんなに深刻になる問題ではないように思いますが。
  1. URL |
  2. 2016/01/11(月) 00:34:59 |
  3. 変寝夢 #-
  4. [ 編集 ]

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詰将棋作家を名乗るには発表作が少なすぎ。
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