ブログのデザインを変更してみました。以前のデザインも気に入っていたのですが、ブラウザによってはレイアウトが崩れる模様。
今回のも完全には回避できていないようですが、多少はマシかと。
■はじめに今回取り上げるのは、詰パラ2015.10 中村宜幹氏作「ポルカ」。詰パラ2016.01の結果稿に記載の手順に誤記があり、正しい手順を忘備録の意味も込めて書いておこう、と思ったのが始まり。
手順を理解しようと調べたところ、見た目よりも複雑な変化紛れを内包している。また、結果稿では、馬鋸のタイミングについても省略されているため、これについても補完しておきたい。
■作品解説
56と、同玉、15と、(途中図1)
ここから26成銀!とするのが、いわゆる「ヤケクソ中合」と呼ばれるトリッキーな応手。どうせ直後に取られてしまうため、先に移動捨合することで2手稼ごうとするものだ。やや唐突な印象を受けるが、趣向手順中の玉の逃げ方で破調が存在しているのを事前に警告してくれている、と見なすこともできるか。
(途中図1から) 26成銀、同龍、47玉、27龍、(途中図2)
解説では簡単に書かれているが、ここから1手ごとに分岐があって難しい。
46玉は、57銀に対して55玉と逃げるしかなく、以下73馬として、64成香でも64角でも同馬以下詰み。
というわけで作意は
(途中図2から) 56玉、(途中図3)
途中図3から67銀?とすると、46玉と逃げられて、銀を手放してしまったため詰まない。また途中図3から57銀?も67玉でダメ。
という訳で銀を温存したまま36龍とする。これに対して67玉と斜めに逃げると、攻方の龍も47龍と斜めに動かせるので早い。
【事実1】6段目の龍の王手に対しては、玉は7段目の同じ筋に逃げることができる。(例外あり)(途中図3から) 36龍、57玉、37龍、(途中図4)
先ほどと同様に、ここで56玉は67銀と打てて簡単。
(途中図4から) 66玉、46龍、67玉、47龍、(途中図5)
先ほどと同様に、ここで66玉は77銀と打てる。今回は逃げ道が2つあるが、55玉は57龍。75玉は53馬以下。
(途中図5から) 76玉、56龍、77玉、57龍、(途中図6)
今までと同様に、ここで76玉は87銀以下。
【事実2】7段目の龍の王手に対しては、玉は6段目の斜め上に逃げる必要がある。(途中図6から) 86玉、66龍、87玉、96龍、77玉、97龍、(途中図7)
87玉のとき、惰性で67龍?とすると98玉と逃げ込まれてしまう。96龍と回って折り返し、97龍と引けば、反転しているが今まで見てきた形と同様だ。
(途中図7から) 66玉、86龍、67玉、87龍、56玉、76龍、(途中図8)
さて、ここが問題の場面。6段目の龍の王手に対しては、玉を真っ直ぐに動かすのが基本だったが……。
ここで57玉?とすると、以下77龍、46玉、73馬、64成香、(変化図1)となる。

実はこの局面、作意の72手目と同じ局面である。馬鋸が始まってしまうため、手数短縮してしまうのだ。
したがって、63馬が動き出すのをできるだけ遅らせるため、玉方は46や37のラインを避けて逃げるのが最善だ。つまり、あえて47玉と斜めに逃げなくてはならない。
(途中図8から) 47玉、67龍、36玉、56龍、(途中図9)
ここでも37玉?だと73馬、64成香、(変化図2)と進んだ局面が作意78手目に短絡する。

したがって、先ほどと同様に27玉と斜めに逃げる。
(途中図9から) 27玉、16龍、37玉、(途中図10)
ようやく馬鋸が始められそうだが、まだまだ油断は禁物。
ここで73馬?とすると、64角!という応手がある。(失敗図1)

失敗図1から、
・17龍は、38玉、47銀、39玉、37龍、同角成…で逃れ。
・64同馬は、同成香、46角、47玉、27龍、46玉、57銀、55玉…で逃れ。
これらは91歩を持駒にした後でも詰まない。
したがって、作意は17龍、46玉としておいてから73馬とする。
(途中図10から) 17龍、46玉、73馬、(途中図11)
作意は64成香だが、
・64角は、同馬、同成香、57銀以下。
・55成香は、57銀、36玉、16龍、37玉、55馬以下。
となってどちらも簡単に詰み。ここで重要な事実が判明する。
【事実3】龍が玉より右側にある場合は、玉が46に来たときに限り、73~91のラインから馬で王手することができる。(途中図11から) 64成香、『26龍、47玉、27龍、56玉、36龍、57玉、37龍、66玉、46龍、67玉、47龍、76玉、56龍、77玉、57龍、86玉、66龍、87玉、96龍、77玉、97龍、66玉、86龍、67玉、87龍、56玉、76龍、(途中図12)
63馬の形(途中図8)では馬の活用を遅らせるために47玉と逃げたが、ここでは既に馬が73~91のラインに居るため、57玉と逃げる方が手数が延びる。
(途中図12から) 57玉、77龍、46玉、66龍、47玉、67龍、36玉、(途中図13)
さて、馬を動かせそうだが。
ここで72馬?とすると、54桂!という応手がある。(失敗図2)

失敗図2から、56龍としても、37玉、57龍、26玉となり、以下
・46龍は同桂で逃れ。
・56龍は37玉で千日手で逃れ。
・27銀は15玉で、53龍が指せないため逃れ。
これらは91歩を持駒にした後も同様。
という訳で、36玉の形ではまだ馬は動かせない。
(途中図13から) 56龍、37玉、57龍、26玉、46龍、27玉』、72馬、(途中図14)
作意は54成香だが、54桂は、同馬、同成香、19桂、18玉、16龍、17角、27銀以下。
ここでもう一つ重要な事実が判明。
【事実4】龍が玉より左側にある場合は、玉が27に来たときに限り、72~81のラインから馬で王手することができる。ここからは、これらの事実に基づいて手順を進めていけば、収束の手前までは到達できる。
(途中図14から) 54成香、16龍、37玉、17龍、46玉、82馬、64成香、
『26龍…27玉』、81馬、54成香、16龍、37玉、17龍、46玉、91馬、64成香、
『26龍…27玉』、81馬、54成香、16龍、37玉、17龍、46玉、82馬、64成香、
『26龍…27玉』、72馬、54成香、16龍、37玉、17龍、46玉、73馬、64成香、(途中図15)
馬鋸はここまで。もう一度龍追いをした後、玉を15に追い込んで収束に入るのだが、その直前でも破調がある。
(途中図15から) 『26龍、…77龍、46玉』、66龍、(途中図16)
ここで、逃げ方は2通り。
①47玉、67龍、36玉、45銀、26玉、56龍、15玉、16歩、14玉、……
②37玉、57龍、26玉、27銀、15玉、16歩、14玉、……
実は②の方が作意なのであるが、一見、①の方が2手長くなりそうに見える。どうなるか見てみよう。
(途中図16から)47玉、67龍、36玉、45銀、26玉、56龍、15玉、16歩、14玉、13と、同玉、53龍、同金、15香、22玉、33角、32玉、42成桂、同金、同角成、同玉、33金、52玉、63銀成、同金、(変化図3)

銀が45に居るので、変化図3から63同馬、同玉、72銀不成と進めたときに54から逃げられないため詰む。
一方、作意はどうかと言うと……。
(途中図16から)37玉、57龍、26玉、27銀、15玉、16歩、14玉、13と、同玉、53龍、同金、15香、22玉、33角、32玉、42成桂、同金、同角成、同玉、33金、52玉、63銀成、同金、(途中図17)
変化図3と違って銀が27に居るので、63同馬では54から逃げられてしまい不詰。したがって、攻め方をちょっと工夫する必要がある。
(途中図17から)43金、51玉、61成桂、同玉、72銀不成、51玉、52金、同玉、63馬、同成香、同香成、41玉、42歩、32玉、33金、21玉、22香まで305手。
72銀不成~63馬が好手。その後はいろいろ詰め方があるが、それほど気にする必要は無いだろう。
■感想、参考作品趣向については、「龍追い+馬鋸」の形式自体が非常に珍しく、その中でも支え駒なしでの龍追いは極めて独創性が高い。そして何より、趣向手順中の馬鋸のタイミングが巧妙に限定されていることに感心した。また、これらを理解した上で短評を再読すると、各氏の短評で触れられている箇所もよくわかる。
最後に、参考作品を下記に挙げておく。いずれも独創的で面白い作品。
・玉が左右に移動する+馬鋸:
河原泰之「SWING II」 403手 詰パラ1993.5 ・支え駒が少ない龍追い:
井上徹也 305手 詰パラ2011.3 ・龍追い+馬鋸:
山崎健「龍馬伝II」 341手 詰パラ2012.7
自分が理解できるように書いたら、有り得ないほど長くなってしまった。削るのも手間がかかるのでこのまま行かせていただく。
ちなみに#01と書いているが、#02以降もあるかどうかは未定。
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- 2016/01/17(日) 18:00:00|
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